「現在はこうして大量生産され、だれでも気軽に手にいれることができるようになりました。始まりの町でも買えると思いますが、ここが一番安いです」――。Amazonに出品された「勇者の剣」のレビュー欄に、勇者や勇者の孫、魔王、武器屋、鍛冶屋などRPG(ロール・プレイング・ゲーム)に登場するキャラクターを演じるレビュアーらが集い、大喜利状態になっている。
「武器としての性能は皆無」だけど「勇者の証」にはなる
この「勇者の剣」は長さ910mm×「暑さ40mm」(ママ)の長剣で、価格は1029円のところ割引されて874円。「そんな装備で大丈夫か?」と、言いたくなるくらいにはお手頃だ
その不安を裏付けるように、実際に使ってみたという「勇者」たちからのレビューは「攻撃力は低い リーチも短い 耐久力も低いといったとても残念な性能」「スライムを倒すぶんには困りません。軽くて持ち運びには便利です。ただ耐久性がちょっと…」「お手頃価格の『勇者の剣』…性能を期待するほうが間違っていました」「武器としての性能は皆無」と散々だ。魔物との戦いであっさり折れた、壊れたといった声も多い。
「昔某魔王を倒したおじいちゃんから引き継ぎました」というあるレビュアーは「うまく立ち回っても、ゴブリン相手に倒すまで一時間はかかります。その前に剣が壊れるので素手で殴りましょう。その方が早いです」と説明し、購入予定者に向けて「とても残念な性能ですが勇者の剣なので所持していることに意味があります。村人からも『勇者さま』と認められるようになり中盤あたりまでの関所を手形なしで通過できます。あなたの名が広まる中盤以降は捨ててもいいです」とアドバイス。別のある「勇者」は、「…つかまされたんだな。あいつらも、僕も。その日の夜は怒りと悲しみが入り混じって、宿屋でのたうちまわりました。かっこいい響きに惑わされた…。そういうとこ、レベルアップできてなかったんだとおもって…。ですからこれから購入しようと考えている方は僕みたいにむやみに期待しない方がいいと思います」と反省の弁を述べる。
中にはこの武器とある武器を合成すると「群馬エクスカリバー」なる強力な新装備が手に入るとの怪情報まで飛び出した。
武器屋「本当のことを書かれてしまうと私の店が潰れてしまいます」
こうした評価に「たまらん」と根を上げるレビュアーも現れた。「はじまりの町の武器屋でございます」と名乗りを上げ、「勇者様方のこの感想を見ていたのですが本当のことを書かれてしまうと私の店が潰れてしまいます…。私の町では勇者の剣を90000Gで売っているのですがカモが減ってしまいますもうちょっと最強とか書いて欲しいのですが」と愚痴っている。
そんな武器屋を横目に見ながら、「鍛冶屋」は「何やら折れるだとか、壊れるなどの物騒な評価が多いですね。そんな時は是非、うちの鍛冶屋を訪れてください。西の地から伝わったアルミホイルといいうもので強度強化はもちろん、切れ味や見た目まで素晴らしいものにしてあげましょう。使う用途で期間は変わりますが、大体2週間~1か月ほど頂ければ素晴らしい武器になり、お返しいたします。電話番号はフリーダイヤル0120-XXX-OOOでございます」と"商売っ気"を前面に。
一方で、純粋にこの剣に憧れているレビュアーもいる。「(元)魔王」だ。
「以前、魔王をしていたのですが、大魔王のかませ犬と呼ばれるのが嫌で一年前に魔王を辞めてニートになりました。でも、このままではまずいと思い、社会復帰しようとネットを見ていたら、魔chのまとめサイトと言う所でこれを紹介している記事を発見したんです。
もう、大魔王のかませ犬と呼ばれるのは嫌ですし、どうせなら勇者にジョブチェンジしようと(所持しているだけで、勇者の証になるという話なので)購入を決意しました。
が、取り扱いがないようですね…
人間界の道具屋に行っても追い払われてしまうでしょうし、魔界の道具屋では取り扱いがない商品なので…こちらで購入するしかないのですが…
私の社会復帰はまだまだ先になりそうです」
――こんな調子で、レビュアーたちがおのおの「ロールプレイ」(役割演技)し書き込んだレビューは実に75件にも上る。「アメリカに住む友人から『日本人のこういうとこホント大好き』と(この商品ページを)紹介された」というツイッターユーザーもおり、海外からも注目されているようだ。なお、この剣は商品説明欄に「演劇に最適!」と書かれていて、当然だが得物としての殺傷力は期待できない。