「『走れメロス』というタイトルは『走れよメロス』のほうがあっているなと思いました」――。教科書にも載っている太宰治の短編『走れメロス』を数学的に検証した中学2年生の「自由研究」がネット上で話題だ。
フルマラソンの平均タイムと比べても遅い
このレポートは理数教育研究所が2014年1月23日に発表した「第1回 算数・数学の自由研究」で最優秀賞を受賞した愛知県の国立愛知教育大学附属岡崎中学校2年の生徒による作品だ。
『メロス』といえば友人のために走り続ける姿が「沈んでゆく太陽の十倍も速く走った」「メロスは疾風のごとく」などと描かれていることが印象的。レポートを作成した生徒も「今回私はメロスがどれほどの勢いで10里(約39km)の道を進んだのかを算出し、数値で彼のがんばりを感じたいと思う」との動機から、メロスが深夜に出発してから3日後の日没までの足取りを調査した。
その手法は、作中の記述から時間などを推定し、移動距離から平均時速を計算するというものだ。たとえば、1日目往路について、「初夏、満天の星の深夜出発」との記述から出発時刻を0:00AMと仮定。さらに「一睡もせず…10里の道を急いで村に到着」「到着したのは午前。日はすでに高く昇って村人たちは野に出て仕事を始めていた」ことを「算出条件」とし、「39kmを10時間で到着したと考えられる。よって平均時速は39÷10=3.9km/時と推定される」と計算。3日目にも同様の計算を行い、復路は平均2.7kmという結果を得て、途中の足止め時間などを含め、グラフにまとめた。それによれば、山賊との戦いの後、死力を振りしぼって走ったとされるラストスパートも時速5.3kmという。
そして42.195kmのフルマラソンの一般男性のタイムが4時間30分で平均時速は9kmであることなどを引合いにだし、「一般男性の歩行速度は時速4kmなのでメロスは往路は歩いたことがわかります」「復路の終わりぐらいに『最後の死力』として走ったけれども、それはただの速歩きだったということがわかりました」と考察。最終的に「今回調べてみて、メロスはまったく全力で走っていないことが分かった」と結論付けた。
感想を「『走れメロス』というタイトルは『走れよメロス』のほうがあっているなと思いました」とつづっている。