外食から衣料品まで日本中どこへ行っても似たような小売店が増える中で、各々の個性を伝え続ける業種がある。古書店だ。『古本屋ツアー・イン・ジャパン』(小山力也著、原書房)は、無類の好きものたる著者が全国津々浦々の古書店を訪ね歩いた、これまた無類の記録。えっ、どこも同じ? ブックオフみたいなものだろう? 読めば、精密な店内描写が微妙な味の違いを教えてくれる。
2008年から再訪をふくめて2000軒以上回ってつづくブログから150軒を収録。周辺地域や街の雰囲気を伝えるエッセイとしての側面を併せ持っていて、そちらもけっこう楽しめる。【2014年2月2日(日)の各紙からⅡ】
被災地の仮設店舗、名前不詳の無人店、「めったに開店しない」店?
どんな分野の古書を中心に何冊あるといったガイドブックとはちがう。東京神田神保町や大岡山の老舗から神奈川藤沢の名店、被災地の仮設店舗、名前不詳の無人店まで。中には「めったに開店しない」店も。どういう店だ?
奇抜な品ぞろえの発見や個性的な店主との触れ合い。「全体的には時間が停まり気味である。しかし!この古の科学&SFが融合した古本屋さんは、一朝一夕では醸し出せない、熟成した芳しき香りを漂わせている、本を探すと言うよりは空間を楽しむ邪道な心持ちで来店すべし」「値段の付いてない本も多く、そう言うのは帳場のおばあさんが破顔一笑して安値を付けてくれる」……個性的な店の紹介は力まないが誠実だ。改行が少ない、文字づかいが怪しいなどの問題はさておき、ブログは独自の世界をつくっている。
しぶとく残る店は、いやでも個性的に
長期休業中の店や著者が行った時がやめる寸前だった店もあるのは、時代の反映だろうか。古本は今ではネットで検索すれば、値段を比べて買える。それでもしぶとく残る古書店は、個性縦横。探訪する価値は、たしかに年々増しているのかもしれない。
「少なくはなったが、地域に根差し頑張る店がまだ残る。独特な感性で店作りをする若い店主の参入もある。本書はそんな店も応援する」と、東京新聞・中日新聞の評者・折付桂子さん。古本屋とそのファンである著者、ともに個性的だからこそできた一冊なのだろう。
人気アニメ番組を作ってきた老舗スタジオ「ぴえろ」の創業者による『クリィミーマミはなぜステッキに変身するのか?』(布川郁司著、日経BP社)が日経新聞に。
夢を売るアニメ界。しかし、資金繰りの苦心やスポンサーとのやり取りなど「経営書としても十分読める内容」と無署名の評者が薦めている。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。