【書評ウォッチ】年産1000万台のトヨタにライバル出現 VWとの決戦必至か

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国家の動向もからんで優劣は?

   歴史でもスポーツでも、ライバルの特徴を書き分けるのが読者にはわかりやすい。この本でも、人気アナリストの著者は、個性あふれる両社の決戦がいつごろ、どこで行われるかを見通す。ただし、最後まで優劣は語らない。VWには欧州市場の不振で業績が足踏み状態の弱点もある。トヨタにしても円安の追い風という点数を少し差し引かなければならないだろう。

   さらに、自動車産業には企業だけの問題を超えて国家の動向がからむことも、分析を慎重にさせているのかもしれない。これを日経新聞の評者・りそな総研の荒木秀之さんは「業界への深い理解と確かな目」があるからこそだと受けとめている。

   労働者や消費者にとってはどうかという視点は、ない。この著者と出版社ではしょせん望むべくもないにせよ、本は世界ビジネスの一面を知るには良い一冊だ。

   『岩波茂雄と出版文化』(村上一郎著、講談社学術文庫)が朝日と読売に。教養主義とアカデミズムの問題を扱った社会学者・竹内洋さんの解説が話題だ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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