エネルギー問題は時代問わず日本の生命線
また、出町氏の著作によれば、浅野総一郎は、終生、エネルギーに関心をもっていた。エネルギー問題は、日本の生命線だ。太平洋戦争も米国の石油禁輸が最終的なきっかけとなったことが想起される。この問題に大きな一石を投じたのは、小泉元総理だ。「小泉純一郎の『原発ゼロ』」(山田孝男著 毎日新聞社 2013年12月)は、元総理の言葉を最初に伝えた、「にわか脱原発派」の毎日新聞の名コラムニストがその事情を明らかにした話題の1冊だ。日本記者クラブの講演後に、演者恒例の揮毫で「百考は一行にしかず」(百考えても一つの行動には及ばない)とした。いずれにしても、原発を含むエネルギー問題は、国家の総力をあげて取り組むべきものであることは疑いのないところだ。
中央が「小泉新劇場政治」に沸く中、福島原発の避難者は精神的にも苦しい日常を生きている。その実情に社会学者が丹念に寄り添ったのが、「人間なき復興―原発避難と国民の『不理解』をめぐって」(山下祐介ほか著 明石書店 2013年11月)だ。小泉元総理の問題提起が、この「不理解」を国民に広く知らしめる契機となるか、注目していきたい。
経済官庁(課長級、出向中) AK