「澄みきり」異例の速さでリニューアル ブランド開発者が語る「進化」の理由とは

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   進化していくブランドでありたい――キリンビールが2013年5月に発売した「新ジャンル」アルコール飲料「澄みきり」が、12月より異例の速さでリニューアルした。13年のヒット商品として日経MJをはじめ各誌に取り上げられ、好調な滑り出しを見せていた「澄みきり」に、何があったのか。

「リニューアルという言葉はつまらないですよね。予定調和みたいな感じがして」

   キリンビールでマーケティングを担当する鈴木伸さんは、取材に対してこう切り出した。

コストアップして睨まれても「コンセプトに近づきたい」

「澄みきり」ブランド開発担当の鈴木伸さん
「澄みきり」ブランド開発担当の鈴木伸さん
「『進化していくブランドでありたい』と決めたので、『進化』したんです。(リニューアルのペースは)これまで関わってきた中でも一番早いんじゃないかと思います」

   今回の「進化」の背景には、「澄みきり」という名に込められた強いこだわりがあった。澄みきりのCMでは豊川悦司さんが戦国武将の姿で登場し、悩み多き現代人に前を向くよう背中を押す。こうした「前を向いていきましょう、というブランドそのものの精神を、商品自体が進化・前進することで体現しているんです」と鈴木さんは説明する。

   「進化させよ。」――単刀直入なキャッチコピーを掲げた今回の「進化」には、確かにリニューアルという語感からはかけ離れた「攻め」の姿勢が見て取れる。

   まずは味。「実は発売した後から、標準化(工場における大量生産で味を安定させ製造すること)の過程で細かく味の改良をしていました。コンセプトに近づけるために、技術者たちがいろいろ知恵を絞りだしてきたので、今回それを落とし込もうと。リニューアルって普通はコストを見直すタイミングでもあるのですが、コストアップしておいしくなりました。まあ、会社には睨まれましたけど」と鈴木さんは笑う。

   発売当初4.5~5.5%と表記されていたアルコール度数も5%と一律に。これを皮切りに、パッケージも色味やバランス、レタリングが細かく変更され、より鋭くクリアなイメージが伝わるデザインに洗練された。

澄みきりで「一人でリセットできる時間」を

   商品のターゲットとしている30代男性は「モヤモヤ感」を抱えがち。さらにこれが澄みきり発売時の時代全体を表すキーワードだったという。そうした状況に、飲料で何ができるか――そのアンサーが味やパッケージで表現された「澄みきらせる気持ちよさ」だった。

「お酒を飲むときのシチュエーションとして、みんなが集まってワイワイガヤガヤとは真逆のニーズもあると思うんです。『一人で自分を浄化したい』という。なので、『澄みきり』を飲みながら、抱えているものから解き放たれてスッキリして、明日もなにかいいことあるんじゃないかな、とリセットする時間を持ってほしいですね」(鈴木さん)

   今後については、「澄みきりのおいしさや、高いクオリティが新ジャンルの『スタンダード』にしていく事と、こういう『価値観』の飲み物をもっと広げることですね」と語り、「もっとおいしくできると思うんですよ」とさらなる進化の可能性ものぞかせた。

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