街を歩けば、空き家が目立つ。これが平均的都市像の姿。『東京は郊外から消えていく!』(三浦展著、光文社新書)が、首都圏ゴーストタウン化の要因を考えている。高齢化や未婚化。東京に限ったことではないが、東京都知事選挙や東京五輪の足もとには深刻な問題が。一方で高層マンション開発も景気回復の掛け声とともに花盛りというから、どうにもチグハグ。はしゃいでいていいのだろうか。【2014年1月19日(日)の各紙からⅡ】
首都圏中心に高齢化や未婚化
少子高齢化はイコール人口減少社会。なのに、マンションの売れ行きが「回復」「好調」とか。東京五輪のメーン会場に近いベイエリアなんかはその典型らしい。郊外から都心への回帰かと思えば、その郊外では空き家の増加と、敷地を分けてのミニ開発がつづく。
国土交通省や総務省によると、マンション着工はここ10年余、毎年10万戸から20万戸前後。空き家は平成15年からの5年間に年平均70万戸を超す増え方だ。どちらも急ピッチとは、なんとも相反するコントラストの国ということか。
「都心集中のオリンピック開催はこの傾向を促進する可能性が高い」と、朝日新聞の評者・都市社会学の町村敬志さん。
そのへんを分析した一冊。居場所のない中高年、結婚しない若者、単身世帯の増加。こうした現象が特に首都圏で大量に噴出すると予想している。発展する街、衰退する街を見分け、郊外のあり方を提言する。だが、衰退せずに「ゴールドタウン」に発展する街がまれにあっても、それで全体の空き家増加に歯止めがかかるものではない。不動産屋の手引書ではないのだから、全国でさあどうするかの総合的な対策を提示してもらいたい。
憲法を市民レベルでとらえようと
ほかでは『憲法と、生きる』(東京新聞社会部編、岩波書店)がよくできている。2013年4月から9月までの東京新聞連載記事に未掲載のデータや発言集を加えて一冊にまとめた。
護憲・改憲の論争ではない。二つの陣営がどう声をからしたところで、憲法自体が普通の人にはどうにも身近に感じられないのだが、それをブロック紙の社会部記者が福島や沖縄にも取材して市民レベルでとらえようとした。憲法に救われた人の話や「護憲」が消えつつある永田町・政界の今も見つめている。
「一人ひとりの憲法を考えるための参考書である」とは、東京、中日両紙の評者・横尾和博さん。改憲論が高まる気配の今だからこその内容だ。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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