【書評ウォッチ】「やればできる」か脱原発 地域エネルギーの具体例さぐる

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   「脱原発」がここしばらくキーワードになるかも知れない、それも新しいセンスで。そう思わせるユニークな本が2冊。『エネルギーから経済を考える』(鈴木悌介著、合同出版)は書名こそ平凡だが、老舗かまぼこ会社副社長さんが太陽光や風力などで地域の電力をまかなおうとする奮戦記。「原発がないと電気が足りなくなるぞ」といった脅しめいた声への違和感をバネに、いろいろと実際にやってみたそうだ。

   『福島第一原発観光地化計画』(東浩紀編、ゲンロン)は、あの原発跡地と周辺を開放して「観光地」にするべきだとビジュアルな編集で提言する。遊園地にするわけではなく、誰もが見ることができる場所にという意味だ。【2014年1月19日(日)の各紙からⅠ】

具体的な試みに顔を向けて

『エネルギーから経済を考える』(鈴木悌介著、合同出版)
『エネルギーから経済を考える』(鈴木悌介著、合同出版)

   東京都知事選挙に細川護煕元首相が小泉純一郎元首相の支援を得て出馬すると表明してから、出つくし感もあった「脱原発」論議が一気にリフレッシュし始めた。「原発なしでは産業がほろぶ」といった経済界の反発は今もくすぶり続けているのだが。人々が議論に飽きたところで原発を本格的に再稼働しようという思惑に待ったがかかりつつある。『エネルギーから経済を考える』はたまたま、このタイミングで出た。

   著者は原発事故の影響でお客が減った神奈川県小田原の街から原発以外の、地域エネルギーを育てようと、全国の中小企業の経営者らに呼びかけてネットワークを作った。この本は、その経緯を紹介しながら共感しあった専門家ら7人との対談を収録。小宮一慶氏や河野太郎氏も登場して「3・11」後のあり方を模索している。

   脱拝金主義、地に足のついた経済力、ネイチャー・テクノロジー、国のありようを変えるチャンス。要するに脱原発は「やればできるじゃないか」という答えを、原発に固執する人たちにつきつけた形だ。学者の「論」よりも具体的な試みに顔を向けている点がいい。こういう意見がまとまると、権益恋しさに原発再稼働を策す「原子力村」の連中は、人々の顔色を恐る恐るうかがうしかなくなる。毎日新聞に。評者は「奥」1文字。

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