プラットフォームビジネスへ
2005年以降、市場支配的な位置を確立したあとのアマゾンは、プラットフォームビジネスという別の次元に突入していくことになる。その象徴がAWS(アマゾンウエッブサービス)であり、今日の産業構造を変える契機ともなりうるクラウドコンピューティングの先導モデルである。同時に、ウォルマートなど既存勢力とのせめぎ合いや、新興ネット事業者への呵責ない買収攻勢、あるいは売上税を巡る州政府との攻防など、巨大企業としての冷徹な顔を見せていくことになる。この間の経緯を、著者のストーン氏はバランスよく解き明かしている。
本書は、ベゾス自身の数奇な生い立ちにも触れている。彼は養子であり、実の父親とは数十年に亘りお互いの生存すら知らない状態にあった。著者が実の父親を探し当てる最後の章は、何やら落語の人情話めいていて、単なるビジネスブックの範疇を超えた余韻を本書に添えている。
経済官庁審議官級 パディントン
◆編集部注 同書の翻訳版「ジェフ・ベゾス 果てなき野望―アマゾンを創った無敵の奇才経営者」が2014年1月9日を発売日として、日経BP社より刊行されました。