「統計学が最強の学問である」西内啓著 ダイヤモンド社
海外出張の時にはつい何気なく空港の本屋に立ち寄ってしまう。普段なかなか本を読む時間がない中で、飛行機の中は格好の読書時間。ぶらぶらと眺めながら何気なく手にとって本を買うのはよい気分転換でもある。今回の出張で、たまたま手にしたのが本書「統計学が最強の学問である」だった。このようにタイトルから何が書いてあるのかおよそ想像がつく本というのは、機内読書にはうってつけだったりする。タイトルから手に取る本というのは自分自身の深層の関心を認識するよい機会でもある。
統計的分析により必要最小限のデータで最大限の効果
本書の冒頭は統計学への関心を持たせる具体的な話からのアプローチである。多くの人が日々の業務で数字を扱っているが、「統計リテラシー」に欠けた扱いによりいかに無駄をしているか、統計学の基礎を踏まえたアプローチにより見えるものが全く違ってくるという点について具体例を挙げて示している。
あえてこのように表現するが、ビッグデータというバズワードに踊らされる社会に警鐘を鳴らすとともに、統計的分析により、必要最小限のデータで最大限の効果を上げることができる、というのが端的な本書から得られた私の感想である。
本書ではビジネス面に焦点をあてているが、これを行政に置き換えて考えてみた。行政の基本サイクルは社会における課題抽出を行い、課題を解決するために政策を考え、実行するというサイクルである。社会における課題抽出のためには、社会の現状を分析する必要があるが、その際には調査を行い、数字による現状把握を行う。漫然と数字を眺めるのではなく、統計的視点により効率よく、効果的に、より正確な分析が行うことができるというのが本書から得られるメッセージであろう。各省庁とも政策実施のために様々な統計、調査が行われ、各自の分析に基づき、政策が実行されているが、必ずしも数字を大切に読み解くという作業までは行えていないのではないかと感じた。