【書評ウォッチ】「秘密法で戦争準備・原発推進」? こじつけで隠される危険、これでいいのか

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   強行採決の衆院から参院に回って審議中の特定秘密保護法案。疑問を投げる本が2冊出た。機密だらけになった米国の現状をとらえた『トップシークレット・アメリカ』(プリースト&アーキン著、草思社)と、原発の情報までが隠されてしまうと告発する『秘密法で戦争準備・原発推進』(海渡雄一著、創史社)。どちらも主張をはっきりと打ち出して警鐘を鳴らす。ともに朝日新聞がとり上げた。大手他紙の読書面には賛否どちらにせよ、こうした現在進行中の問題に触れた記事が少なく、鈍い。【2013年12月1日(日)の各紙からⅠ】

増えすぎて制御の限界を超える

『トップシークレット・アメリカ』(プリースト&アーキン著、草思社)
『トップシークレット・アメリカ』(プリースト&アーキン著、草思社)

   米国では2001年の同時多発テロ以来、機密扱いの情報が増えたそうだ。当然と言えばそうかもしれないが、問題は機密指定が際限なく広がり続けること。莫大な予算が注ぎ込まれて財政を圧迫し、民間までも巻き込んで制御の限界を超える。米国中に「最高機密」があふれる実態をまとめたのが『トップシークレット・アメリカ』だ。

   関係政府組織は1200、従業員は25万人を超え、業務を請け負う民間会社を含めると85万人以上がなんらかの「最高機密」関係者というからあきれる。秘密は政治家や役人のご都合よく隠れ蓑にされ、ある種の人間にとってはビジネスチャンスという金儲けにも通じる。だから、いったん制度化すると歯止めがかからない。解除や緩和は彼らのリスクになるので極力避けたがる。新しい抵抗勢力が生まれ、世の中が停滞する。

   著者はワシントンポスト紙の記者と元米陸軍情報局分析官。「出色の現代米国論だ」と、朝日評者の文化人類学者・渡辺靖さん。米国論にとどまらず、あとを危なっかしく追いかけそうな日本の深刻な未来予想図なのかもしれない。

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