霞ヶ関官僚が読む本
辛く、厳しい介護現場の現実。担い手をどう確保していくか

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強ストレスの介護現場

   介護現場の離職率は2割近くに上る。著者の知り合いの多くも中途で介護業界を去った。高齢者のお世話をするのが嫌になったからではない。「職員同士の人間関係が良くない」「福祉の美名のもとに、うまく利用されている」「わけのわからない仕事まで説明もなくやらされている」といった職場環境の悪さが原因だという。

   著者が経験した具体的事実が語られる。

①職員の出入りが激しい職場で(入居者の)データベースもマニュアルもまったくないのは、「不便」である以上に「危険」。「マニュアルが無い上、(上司からの)指示が曖昧だったり、その時の気分で怒られていては、たまりませんよ」。

②あまりに多忙なため、職員はイライラしている。とりわけ女性、それもベテランや幹部職員のイライラが目立つ。「職場ストレスは、この世界での大きな問題になっているんですよ。上の者は下の者に溜まったストレスをぶつける」「介護現場で、キャリアの浅い職員がぶつけられるのは、入居者や利用者だけ。介護する側と、される側、現実的な力関係は明らかだ」。しばしば報じられる介護施設での虐待事件の背景だ。

③介護現場での強いストレスは、介護事故のリスクが隣合わせであることにも一因がある。ベッドからの転落、移動や食事の介助時の事故(けがや誤嚥)、配膳時の取り違え(禁忌食品の摂取)など、現場には、数々の危険が潜んでいる。また、職員にのしかかる「責任」もある。ワンフロアの入居者50名に対し、夜勤は2名。風邪をひいたからといって簡単に休むわけにはいかない。「疲労と責任とが両肩に乗っかっている感じ」だという。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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