自ら天下めざす野望なかったか
『新装版 播磨灘物語』
『竜馬がゆく』や『坂の上の雲』など数々の歴史小説を世に送り出してきた作家・司馬遼太郎が黒田官兵衛を描いたのが、講談社の文庫『新装版 播磨灘物語』(著・司馬遼太郎、1~4巻各660円)である。人気作家によるこの作品によって、官兵衛の人気はさらに高まったという。
播州の小大名の家老の家に生まれた官兵衛は、東の織田か、西の毛利かの狭間にあって、信長に新時代の息吹を感じて織田方に参じ、秀吉と出会い、活躍の舞台を広げた。本能寺の変で中国大返しを献策するなど、その才覚は天下を左右するまでになる。秀吉の死後、天下分け目の決戦となった関ヶ原の戦いは、あっけなく終わってしまうが、もし、長引いて膠着状態に陥っていたなら、今度こそ、参謀としてではなく、自らの天下取りに名乗りをあげていただろうか。