「エンジニアとして、あなたが解決したい社会問題のテーマとその具体策について述べなさい。」という文章の下に、解答欄のように大きくとられた空白。こんなちょっと不思議な広告が2013年11月1日、日経新聞朝刊などに掲載された。技術者派遣業界大手のテクノプロ・ホールディングスが仕掛けたものだ。
いま、日本では技術者のニーズが高まっている。技術開発の多様化や期間の短縮化が要因で、メーカーはもちろん技術者派遣業界でも、各社が優秀な技術者獲得のためさまざまな施策を積極的に打ち出してきている。
今回の広告は、どうやら、加熱する技術者確保競争を優位に進めるためのテクノプロ・ホールディングスの戦略のようだ。いったいどんな狙いがあるのか。同社の営業企画本部マネージャー・和気みゆきさんに話を聞いた。
「エンジニアって固そうだけど、意外と面白そう」
――大きくとられた空白が印象的な広告ですが、どんなメッセージが込められているのですか?
「学生やエンジニアのみなさんに『社会の課題」を投げ『一緒に考えよう』と呼びかける狙いです。正しい答えがないものを『考えることに意味がある』とする姿勢を感じてもらえたらと思います」
――今後は、電車内の中吊りや大学の学食にも掲出していくそうですがどういった狙いがあるのでしょうか?
「場所については『オン―オフの切り替え』が起きるところというのが一つあります。食事、通勤通学中に目に付くようにしてみました。
大学での掲出は、学生にテクノプロ・グループを知ってもらおうということです。新卒採用に力を入れており、今年は256人に内定を出しました。今後も規模を拡大する予定ですが、新入社員に聞くと『就活をはじめるまで(テクノプロ・グループを)知らなかった』という声も多く、これは統一的なブランディングの必要があると。
学食を選んだのには、『問題形式』が学生に馴染み深いな、という『遊び心』もあります。『エンジニアって固そうだけど、意外と面白いんだな』と思って欲しいです」
――新卒で「派遣」として就職とは意外な感じもしますが、「技術者派遣」とはどんなものなのでしょうか?
「いわゆる派遣というと、有期雇用で不安定な身分と思われがちですが、テクノプロ・グループはエンジニアを正社員として雇用しています。
開発に必要なノウハウがない、人材の育成が追いつかないという悩みを抱えている企業に対して、その会社にない技術を持つ正社員のエンジニアを派遣し、開発パートナーとしてお客様のプロジェクトのコアに関わります。これが『技術者派遣』です。技術者の中にも一つの製品に携わり続けることにリスクを感じ、積極的に派遣技術者を選択する人もいます。」