霞ヶ関官僚が読む本
高杉良、東野圭吾、そして池井戸潤 熱くて深い「筆圧」の魅力とは

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「半沢直樹」だけではない、多彩な内容

   池井戸潤氏は、TBSドラマ「半沢直樹」で一躍有名になった。著者は岐阜県出身であるが、私自身、岐阜県に仕事でのゆかりがあったこともあり、長年にわたり(近年のように有名になる以前から)、気に入って読んでいた。多くは、著者自身の銀行勤務のご経歴から金融業界内の事情に精通したものとなっているが、それ以外にも融資先である各種業界もカバーした内容となっており多彩である。公共事業の談合をモデルにした、『鉄の骨』(吉川英治文学新人賞を受賞。直木賞候補にもなった)、そして、特許買収と中小企業をモデルにした『下町ロケット』(直木賞受賞)、経営が厳しい企業がどのように野球部を存続させるかを描く『ルーズヴェルト・ゲーム』、企業の不正を描いた『空飛ぶタイヤ』、『七つの会議』などは、大変気に入っている。

   私自身、いわゆる経済官庁の中堅職員であり、上記の筆者・書籍にはある程度親和性を感じるのはある意味必然かもしれないが、世代や業種を超えて今後さらにファンが広がることを大いに期待したい(私が心配するまでもなく、広がるだろう)。特に、若者の紙離れが言われて久しいが、是非、本屋に出向き新書の醸し出す匂いを嗅ぎながら、手にとっての愛読を勧めたいものである。

MS省(調査官級)だいき

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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