中国嫌いは多い。一方で友好を望む人もいっぱいいるはずだ。互いに関心がありながらギクシャクし続ける関係を庶民感情からとらえた『中国人の誤解 日本人の誤解』(中島恵著、日経プレミアシリーズ)が毎日新聞の新刊欄に。「戦争をしたがっている」「そっちがケンカ腰でくるからだ」とまあ、売り言葉に買い言葉が飛び交いかねない思い込みのあれこれに、冷静な対応を呼びかける。人々の実像を求めて取材した結果は、どちらの「常識」も的はずれだよということだろうか。【2013年11月3日(日)の各紙からⅠ】
日本人としては「まさか」と声をあげたくも
両国関係の情報は、互いの新聞やテレビ、ネットさらに書店などに今やあふれかえる。しかし、誤解や偏見が実像とかけ離れた「常識」を生む可能性はたしかにあるかも。そう疑いながら、この本を読めば驚く話、うなずける話、どちらも盛られている。
驚くのは、中国では「日本人は本当に戦争をしたがっているんじゃないか」と思うのが普通だというあたり。「日本人としては、まさかと声を上げたくなる」と、毎日の署名「近」1字の評者。「そういう人が少なくない」といったレベルではすでにないことに、著者はインタビューを繰り返す中で気づいたそうだ。
日本人の多くは、中国の反日教育と抗日ドラマに原因ありと思いこむ。日本のテレビで一部流された映像は、旧日本軍の暴力行為と被害者の中国人、それを助ける中国ヒーローのカンフーばりの大活躍。露骨で低俗、安っぽい作りにはあきれるばかりだ。しかし、問いかけに「特に反日教育を受けたことはない」「抗日ドラマは暇つぶしの茶番劇」と答える若い中国人が多かったという。だからよいってわけでもなかろうが?
誤解が増幅し、感情を悪化させる現状。反対に、好印象はなかなか伝わらない。「お互いに素顔を知らない永遠の隣人」という、どうにも切ない関係を本は描きとっている。