経済の専門家と音楽や文学をカバーする記者
水野氏は1953年生まれ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフエコノミストや内閣官房内閣審議官(国家戦略室)などを歴任し、「100年デフレ」など多数の著書がある。経済事象を人類の長い歴史や思想潮流の中で大きく捉える分析で知られる。一方の近藤氏は1963年生まれ。「リアルロック」「『あらすじ』だけで人生の意味が全部わかる世界の古典13」などの著書があり、音楽や文学を基点に幅広く文化ジャンルをカバーする。
たとえば、近藤氏の質問はこんな具合だ。
――ピンク・フロイドに「マネー」という曲があります。「マネーはガスみたいなもんだ」と歌っている。ガスには「すごいやつ」という俗語の意味もありますが、「気体」つまり手にはできないものという二重の意味を持たせている。ところで、水野さん、「おカネ」「貨幣」って何ですか?
ロックの話から、いきなり経済の根本問題に切り込んでいく。「ラジカル」である。対する水野氏の答えは? それは、本書の中に縷々記されている。
かつて坂本龍一氏が哲学者、大森荘蔵氏と対話した『音を視る、時を聴く哲学講義』が話題になったことがある。本書はそのポップな「経済」バージョンといえるかもしれない。
トシは中年(熟年?)だが、精神はいまだ青年――そんな二人による大人の「白熱教室」のようでもある。