ファッショナブルな服装で山へ登る女性のことを「山ガール」というが、それが呼び水となったのか、シニアに達した団塊の世代も加わり、ちょっとした登山ブームだ。紅葉の美しい季節、手軽に山を楽しむための心構えや注意点を知っておきたい。
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親子で山デビュー、手取り足取り
『こどもと始める 家族で山登り 安全に楽しむコツとテクニック』
この夏、世界遺産に登録された富士山で子ども連れを多く見かけたが、富士山といわないまでも、家族で登山を楽しみたいという人が増えている。阪急コミュニケーションズの『こどもと始める 家族で山登り 安全に楽しむコツとテクニック』(編・NPO法人クリエイティブ・スポーツ・パートナーズ、1575円)は、親子で山デビューするためのノウハウとヒントをわかりやすくまとめたものだ。
家族登山だから「楽しく安全に」が第一。子どもには学びと成長の場になる。目次をみれば、プランニング、装備と服装、こどもが歩けなくなった時にどうするか、といったことまで手取り足取りだ。家族向けとして高尾山(東京)、鎌倉アルプス(神奈川県)、霧ケ峰(長野県)、麻耶山(兵庫県)などを紹介している。
無理なことを次々やり遂げる勇気
『一歩を越える勇気』
イギリスの登山家ジョージ・マロリーが言ったとされる「そこに山があるから」はあまりにも有名だが、登山家はいつの時代にも名言を残す。限界に挑戦しながら頂上を目指す経験から生まれるひと言ふた言が、人生の糧となるのだ。日本の若き登山家、栗城史多は果してどんな言葉を残すのか。サンマーク出版の文庫『一歩を越える勇気』(著・栗城史多、630円)は夢をあきらめず、一つひとつ実現していく勇気について語った1冊である。
身長162センチ、体重60キロ、肺活量や筋肉量は平均男性以下という身体で、北米最高峰マッキンリーはじめ各大陸の最高峰に登頂。コネもないのに億という金を集め、エベレストからのインターネット生中継を試みる――無理だと思われることを次々にやり遂げ、新たな目標に向かって挑戦し続ける秘密はなにか。
「単独行」の加藤文太郎を描いた傑作
『孤高の人』
新潮文庫の『孤高の人』(著・新田次郎、上下とも746円)は昭和初期の異色の登山家、加藤文太郎をモデルに描いた小説で、山岳小説の傑作と評される。日本の登山が裕福な人たちの高級なスポーツだった時代に、地下足袋で日本アルプスの山々を次々に踏破し、衝撃を与えた。単独で行動するため「単独行の加藤」といわれたが、友人とパーティーを組んだ北鎌尾根で吹雪に襲われ消息を断つ。結婚間もない30歳の若さだった。その生涯を通じて「人はなぜ山に登るのか」に鋭く迫る。
この小説を原案としたのが集英社のヤングジャンプコミックスの『孤高の人』(著・坂本眞一、全17巻各540円)だ。主人公は加藤ではなく森文太郎と名乗り、現代風にアレンジしてある。第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。