「単独行」の加藤文太郎を描いた傑作
『孤高の人』
新潮文庫の『孤高の人』(著・新田次郎、上下とも746円)は昭和初期の異色の登山家、加藤文太郎をモデルに描いた小説で、山岳小説の傑作と評される。日本の登山が裕福な人たちの高級なスポーツだった時代に、地下足袋で日本アルプスの山々を次々に踏破し、衝撃を与えた。単独で行動するため「単独行の加藤」といわれたが、友人とパーティーを組んだ北鎌尾根で吹雪に襲われ消息を断つ。結婚間もない30歳の若さだった。その生涯を通じて「人はなぜ山に登るのか」に鋭く迫る。
この小説を原案としたのが集英社のヤングジャンプコミックスの『孤高の人』(著・坂本眞一、全17巻各540円)だ。主人公は加藤ではなく森文太郎と名乗り、現代風にアレンジしてある。第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。