霞ヶ関官僚が読む本
日本の財政はなぜ再建できないのか 「痛み伴う決断できない」予算の構造問題

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国家目標を新たに設定し直すという可能性も

   しかし、『平成デモクラシー 政治改革25年の歴史』(佐々木毅ほか著 講談社 2013年)で回顧されているが、その「設計主義」に基づく努力はこれまでのところ必ずしもうまくいっていない。近代国家の運営に不可避の官僚機構をことさら敵視し国政を停滞させた事情を分析する『民主党政権 失敗の検証』(日本再建イニシアティブ著 中公新書 2013年)も示唆深い。

   そこで、『近代日本の官僚』(清水唯一朗著 中公新書 2013年)が示す明治以来の政党と官僚の良き協調の時代に鑑みれば、村松岐夫著『日本の行政』(中公新書 1994年)が示す行政学の通説(官僚は政策の選択肢を進言する技術者に徹すべし)が示す方向とは異なるが、その良き協調の再構築のため、今後日本が目指す国家目標を新たに設定し直すことも現実に探るべき時期ではないか。

   なぜ、財政再建ができないのか、その理由を日本の予算制度に着目し、詳細に探ったのが、元財務官僚の田中秀明・明治大学公共政策大学院教授の『日本の財政』(中公新書 2013年)だ。予算をつくる仕組みや制度における透明性の欠如、政治的な意思決定システムが分権化していて痛みを伴う決断ができないことなど問題点がこれでもかというように指摘される。「財政問題は、とかく自分とは関係ないと考えがちであるが、国民が理解して初めて問題解決に向けた第一歩になる」という前向き姿勢の本書に学ぶところは多い。2020年の東京オリンピック開催が、ギリシアのように国家破綻前の「最期の宴」であったと言われないで済むかどうか、開催までの7年間はまさに日本の正念場だ。

経済官庁B(課長級 出向中)AK

   J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも記事を公開中。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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