財政再建。なぜ日本は失敗を繰り返すのか。海外では「成功」した国もあるのに。悪いのは、政治家か官僚か、それとも国民なのか。いや、「真の原因」は他に?
『日本の財政』(中公新書)は、財務省時代から各国の予算や財政問題を研究していた、田中秀明・明治大学公共政策大学院教授が、「日本は財政再建に着手しても、なぜ財政規律を維持することができないか」という問題を主軸に、さまざまな事例や研究成果に触れながら原因を分析し、解決方法にも踏み込んでいる。
「日本の若者は、世界で最も不公平な立場に立たされている」
第1章で、日本財政が「危機を深めた」最近の20年間の流れをおさらいした上で、各国の成功・失敗例なども紹介していく。
財政赤字が発生する理由については、「政治家の行動」に原因を求めるモデルや、「官僚の予算極大化モデル」などを取りあげ、比較検討する。筆者自身は、焦点を主に「予算制度」の問題点に絞っていく。法的な枠組みだけでなく、編成過程における慣習的な手続き、政治的な意思決定システムなどを含んだ「制度」の話だ。
国(と地方)の借金は、他人事ではないとも訴える。「今は借金でしのいで、負担は将来世代へ先送り」という世代間の公平性の問題を取り上げ、「日本の若者は、世界で最も不公平な立場に立たされている」と指摘している。
「古巣」財務省への「苦言」もある。財務省の役割は、調整者として政治家の利害に仕えることになっているとして、「改革は政治的な反発を招きやすいため、財務省は改革に後ろ向きである」と述べ、公務員制度改革の必要性も説いている。
また、消費税の段階的引き上げが予定されているが、それでも財政状況は、「一息つきたいところであるが、そのような余裕はない」とも指摘している。
2013年8月、発売された。903円。