面と向かって話していると、相手の口から腐った卵のような臭いがする。指摘しづらいし、もしかしたら自分もそうかも――日本人を悩まし続けている「気になるにおい」のトップが「お口のニオイ」だ(江崎グリコ調査)。実はこの原因、ほとんど「舌」にあるらしい。
「明らかに口臭と感じ明確に不快感を与える」原因成分とは?
いったいどうすればいいのか。江崎グリコには「お口のニオイ」を専門に研究する「お口のニオイ研究ラボ」があるという。さっそく東京の品川オフィスをたずねてみると、ものものしい計器の置かれた部屋に、釜阪寛ラボ長と小林隆嗣研究員が待っていた。2人は100人以上もの舌を見続けている「お口のニオイ」のスペシャリストで、「お口のニオイ研究ラボ」サイトでも、対策に悪戦苦闘する姿が動画で公開されている。
「では、実験してみましょう」(小林研究員)
さっそく、記者(20代女性)の「お口のニオイ」をチェックするという。昼食後に歯磨きしないまま来たのを後悔しながら、口の中の空気を採取し、分析してもらう。結果は無事「臭わない」ということでほっと胸をなでおろした。
「今度は、クチが臭う状態を体験してもらいます。これをクチに1分間含んでください」(小林研究員)
差し出されたすっぱい液体を口にいれた後、同じ実験をすると――計器のつながったコンピュータの画面に大きな山が2つ表示され、「明らかに口臭と感じ明確に不快感を与える範囲」との結果が出た。
「これが硫化水素なんですね」(小林研究員)
小林研究員によると、お口のニオイには大きく分けて、生理的なものと、食品由来のもの、体調が良くないと起こるものの3種類がある。このうち生理的なものの大元は、「舌苔」と呼ばれる、舌の表面の白っぽい汚れだ。この正体は口の中の食べかすや歯石、口の中の剥がれ落ちた古い皮ふなどのたんぱく質で、これが細菌によって分解され、硫化水素、いわゆる「卵の腐ったようなニオイ」を含むVSC(揮発性硫黄化合物)と呼ばれる成分を発するようになるという。
「食パンを水なしで食べられなかったら要注意」
また、お口のニオイは口の中が渇くほど強くなる傾向がある。朝によく臭うのは、夜中の唾液分泌量が少ないためだそうだ。口が渇く原因としては、年齢を重ねることや、ストレス、薬を飲んでいることなどがあげられるという。
「食パンを水なしで食べられなかったら要注意です。でも、唾液は訓練でも出るようになるので、普段から物をよく噛むとか、飴やタブレットを舐めるとかして、唾液腺を刺激するといいですね。あとはストレスをためないとか」(釜阪ラボ長)
では、唾液を増やす以外に「お口のニオイ」を取り除き、快適に過ごすにはどうすればいいのか。
「口臭の原因の多くは舌苔です。最近では舌苔を取り除く舌ブラシや、洗口液、タブレットといった商品も出ていますので、毎日鏡で舌をチェックして『白いのが溜まってるな』と気になったときにケアをするのが良いでしょう。舌は健康状態のバロメーターになりますから、舌が乾いていたり舌苔が溜まっていたりしたら、調子が良くないのかな、と振り返るきっかけにもなりますよ」(小林研究員)