歴史と現実をどう解釈?
まさに需要と供給の補完関係。「事件で語られる日韓関係ではなく、日々の交易の現場で見ること、聴くことから」「調べることのすがすがしさを、この書物に感じた」と、評者の哲学者・鷲田清一さん。同時に、この豊かな交流を崩すものがある点にも触れている。
執筆時とは時間的ずれがあるから本にはないが、韓国の禁輸措置を著者はどう受けとめるだろうか。評者の方は当然ニュースを知っているはずなのに、なぜもっとはっきり具体的に論じないのか。まさか、一時的なことだから問題外と切り捨てるわけではないだろう。避けて通らず、教えていただきたいものだ。
いま起きている「日韓さかな交流史」の重要な局面をしっかりと解釈しなければ、両国のつながりをいくら強調しても混乱はおさまらない。豊かな歴史と現実の危機。重ねてきた交流そのものも途絶えかねない事態に、研究者や知識人の姿勢が問われている。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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