韓国が福島など8県からの日本産水産物50品目を全面輸入禁止にしたことで、日韓の間で魚が「いっぱい行き来していたのか」と改めて知った人も多いだろう。両国間の魚文化の交流を考えた『ハモの旅、メンタイの夢』(竹国友康著、岩波書店)が朝日新聞に。魚に国籍はなく、人々が必要なものを食べあってきた歴史の豊さがよくわかる。
ただし、五輪開催地決定直前の禁輸発表と科学的根拠もなく原発事故にこじつけた偏見・誤解・過剰反応には、隣人同士の自然な交流と融通の前に立ちはだかる思惑や愚行の壁を感じざるを得ない。偶然かどうか、なんともタイムリーな出版と書評ではある。【2013年9月22日(日)の各紙からⅠ】
海峡をまたいで補い合う
京都の夏をいろどるハモ料理。韓国の人々が「明太」(ミョンテ)と呼んでよく食べ、祭祀の供え物にもするスケトウダラ。どちらの魚も、実は海峡をこえて大量に輸出入されて食卓へ。ほかにも、日本からはタイやサバ、マグロ、ヌタウナギ、さらにサンマやイワシの冷凍品も、韓国からはアナゴ、太刀魚、ヒラメ、マフグなど、それはもう多種多様な魚が取り引きされてきた。
そうした交流のありさまを軸に、本は植民地時代や朝鮮戦争の影響から魚種研究にかかわった両国先駆者の業績にまで踏み込み、長い間のやり取りを丹念にたどった。
スケトウダラの干物・プゴの最上級品である黄太(ファンテ)と野菜を煮込んだスープも、おいしそうに登場。両国産の魚介類が人々にいかになじみ深いものかがわかる。そのスケトウダラは朝鮮半島近海で獲れなくなり、それを日本からの輸入が補ってきたのだ。