ずば抜けた身体能力が超えた壁
『超える力』いつのころからか、スポーツ選手のことをアスリートと呼ぶのが一般的になってきたが、ハンマー投げの室伏広冶は日本の誇る最強のアスリートの1人だ。文藝春秋の『超える力』(著・室伏広冶、1365円)は4度の五輪に出場し、アテネでは金メダルを獲得した室伏がハンマー投げに打ちこんだ半生について語り尽くした1冊だ。
父親の重信も「アジアの鉄人」と呼ばれたハンマー投げの選手で、母親はルーマニアのやり投げの代表選手だった。100メートル10秒台、100キロの握力計を一瞬に振り切るという並はずれた身体能力で記録への挑戦を繰り返し、ハンマー投げの奥義を追求しながら、年齢との闘いに挑むなど、常に高みを目指し様々な壁を乗り超えてきた。アスリートとは何か、類まれなアスリートによる本格的なアスリートの本である。