インターネットによって社会と暮らしがどう変わるかのは、少し前までよく語られるテーマだった。バラ色の未来論者も強引な否定派も、戸惑う人の疑問にはっきりとは答えきっていない。そこを「ほら、これが現実だよ」と指し示す本が出た。『ネットのバカ』(中川淳一郎著、新潮新書)が読売新聞に。
内容は明快だ。「バカが増える一方」「身もフタもない現実を直視せよ」と、ネットがリアル社会の格差をむしろ拡大する面を激しく追及。少なくとも現時点の解答として立派に成立、新時代の泳ぎ方・考え方を提起する。【2013年9月15日(日)の各紙からⅠ】
誰もが平等に活躍できる場ではない
ツイッターやフェイスブック。おかげで自分の考えを世界に発信できる、友人がいっぱいできる。これまではマスコミから一方的な情報を受けるだけだったのに、誰もが発信元になり、意見の交換もできる。画期的な変化であることは間違いない。が、変化の先にあるものを、本はクールに見すかす。
「そりゃあいいね! それで世の中まったく変わりませんが」。インターネットは誰もが平等に活躍できる場ではけっしてないことを、本は実例をあげながら解説していく。
ブログの閲覧数やツイッターのフォロワー数は有名人が圧倒的に多い。一方には、はまりすぎて人生を誤る人も。有名人に貢ぎ続ける信奉者、課金ゲームにむしられる中毒者……「99.9%はクリックする奴隷」「ネット階級社会」と言い切るハードな解説。ネットに翻弄される人や事件を直視していくと、著者の主張は説得力をいちだんと帯びる。