高齢化社会があれこれ話題の今でも、老人の大半は自分を老いたとは思っていない。そこらの本心を軽快なタッチで明かす『オレって老人?』(南伸坊著、みやび出版)が読売新聞に。66歳になった人気イラストレーターが、50代後半から現在までの「法的にいって前期高齢者」暮らしをつづった。特別なことが書いてあるわけではないけれど、老いてこその体験をスラリスラリとやりすごしながらの、ちょっぴり切ないご自身観察記だ。
これまで「いったい何を考えているのか」というテーマの観察対象は、米国や中国から若者、経営者、消費者、女性、果ては犬猫までさまざまつづいてきたが、どの街でも増え続けるご老人も重要な存在。読めば、けっこうおもしろいうえに考えさせられる。【2013年8月18日(日)の各紙からI】
「リッパにおとなげなく」団塊世代の老人自身論
本の帯にもある「前期高齢者になった団塊世代のほぼ50%は自分を老人と思っていない。あとの50%が自分を老婆と思っているはずがない」とは、名セリフだ。だから老いても生涯青春だなどと疲れることを、この本は言わない。アンチエイジングも不自然と切って捨てつつ著者は「老人は老人らしく」とは考えたそうだが、「ほんとのほんねのところでは、自分を私はまだ若者のつもりでいるらしいのだ」とも吐露する。
その老人になりたてのころは、笑い方も品よくニコニコ、ペコペコしたそうだ。かわいい女の子にほめられたりすると、もうとたんに。ところが「老化すると、あちこち痛いから、そんなにニコニコしてばかりいられない」と、ご老人の心はゆれ動く。
笑い方はてへへ、えへへと緩んできて、しまいにはワーハッハッハッハだとか。「著者は十年かけ、なんともリッパにおとなげなくなられた」と、読売の評者・石田千さん。石田さんは銀座から青山につくまでの電車内で「なんど吹き出したかわかりません」という。個性的な老人自身論。
電気を手作りの家産家消
ほかには、猛暑の夏にあわせたか、電気を手作りするノウハウを説く『自宅で楽しむ発電』(中村昌広著、ソフトバンク新書)を東京新聞がとりあげた。
100円ショップや雑貨店で買えるもので実践する。1台3万円かからなかったそうで、蓄電用のバッテリーも2個あれば十分という。方法論よりも考え方に「元気が出てきた」と、評者の中野不二男さん。行政主導の節電に対する家産家消の知識とテクニック。小規模な発電なら、やればできるということか。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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