ホームレスの自立を全米各地で進めている「社会企業」に学びながら日本での展開を考えた『10万人のホームレスに住まいを!』(青山やすし著、藤原書店)が朝日新聞に。資本主義の市場原理を活用して社会問題の解決をめざした起業家へのインタビューと元都副知事の著者が語る日本の現状分析。理想と現実の狭間で自立支援の方策を探った。きびしい環境の中で社会企業の成功には何が必要か、考えた。【2013年7月28日(日)の各紙からⅡ】
今や全米130以上で10万人を救う事業に
人助けのための社会企業の本場は、実はアメリカ。その代表格がニューヨークを皮切りにホームレスの自立支援を米各地で成功させてきた「コモン・グラウンド」だ。創設者のロザンヌ・ハガティさんは一人でNPOを立ち上げ、マンハッタンの荒れホテルをホームレスの生活の場にした。
一時的な避難場所とは違う。安定した住居であることが特徴だ。医療や教育まで考えて、社会的排除を克服するコミュニティー建設を全米130以上で展開し、10万人を救う事業につなげた。インタビューは約20年間の活動記録でもある。
一般企業や行政と必ずしも対立するのではなく、時々うんざりさせられながらも有能な協力者を見つけて理解を深め、その力を有効に使いこなすしたたかさも。「社会企業は、市場経済的な価値観もしくは考え方を一方で身につけています。事業自体の自立性もしくは経済的合理性にも関心を払います」と、彼女自身が本の中で語る。
後半は、都庁の一員として長く、日雇労働者の問題や災害復興に取り組んできた著者が社会的包容力を語る。社会企業という制度もない日本で「市民活動の発展のため社会企業法の制定を」と呼びかける一冊でもある。「日米比較も説得力がある」と朝日の評者、文化人類学の渡辺靖さんが薦めている。