【書評ウォッチ】理系には女性がなぜ少ない? 「男女で能力に差」あるのか

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   リケジョや理系女子という言葉がつぶやかれるようになった。期待感もある一方で珍しさもまだ抜けない。『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』(スティーブン・J・セシら編、西村書店)が読売新聞に。世界共通の現象についてまとめた15の見解。意見は必ずしも一致しないが、特定の方向に強引に引っ張らない論争姿勢がむしろよい。

   実際、理系研究者の多くは男性。女性の社会進出時代なのに? 古めかしい習慣や制度のせいか、男女の本質的なちがいなのか。微妙な問題に一石を投じた一冊。「数学のテストで日本の女子は米国の男子を62点も上回っている」との記述もあるぞ。【2013年7月28日(日)の各紙からⅠ】

「男女で生まれつき能力差があるのか」とは

『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』(スティーブン・J・セシら編、西村書店)
『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』(スティーブン・J・セシら編、西村書店)

   米国ハーバード大学の総長が男女差に関する発言をきっかけに辞任に追い込まれたことがあった。「この論争はやっかいで根深く果てしない」と、評者の宇宙物理学者・須藤靖さん。本では欧米のトップレベルの研究者たちが統計学や進化論、ホルモン、神経科学など、さまざまな専門的知識を基に意見を出す。執筆者の7割は女性だ。

   「数学のノーベル賞であるフィールズ賞の受賞者に女性はまだいない」「国による差の方が性差よりもはるかに大きい」「男女は異なるというよりはずっと似ている」など。中には、科学分野の女性数を問題にするより「社会サービス業務における男性の少なさ」を議論すべきだという意見も。

   出版元のPR文句は過激に「生まれつきの能力差があるのか」と問いかけるが、15の見解を参考に結局は読者それぞれが考えるしかない。訳者の「軸足は生物学」という大隅典子さんは、自身のHPで「女性は職業選択の際に、男性より社会の役に立つかどうかを重視する人が多いので…(中略)…多様な社会への役に立ち方があるということを、なるべく若いうちに伝えることも大事です」とやさしく語りかけている。

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