「連れ込み」とか「逆さクラゲ」などと呼ばれたラブホテルだが、いまでは「ラブホ」の愛称で通っている。最近はそこを舞台にした桜木紫乃の小説『ホテルローヤル』が直木賞を受賞して話題になった。戦後日本の欲望とともに肥大化し、一大ビジネスに成長したラブホテル。あなたの知らない裏の世界を案内しよう。J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも特集記事を公開中
「現役女子大学院生」による研究成果
『ラブホテル進化論』お城のような建物、けばけばしい装飾。なぜ、ラブホテルの外観はどこも同じようにド派手なのか。それは、外観そのものが広告塔の役割を果たさなければならなかったからだ。いまでこそ雑誌やインターネットに情報が載っているが、おおっぴらに宣伝できない時代があったのだ。文藝春秋の文春新書『ラブホテル進化論』(著・金益見、767円)は、日本人の性意識と住宅事情の変遷を背景に、めまぐるしい進化を遂げたラブホテルについての研究をまとめたものである。
発売当時、「現役女子大学院生によるラブホテル研究」と話題を呼んだが、著者は神戸学院大学大学院時代に全国300軒以上のラブホテルを訪れ、突撃取材で生々しい証言を引き出し、業界の実態と未来像をダイナミックに描き上げた。
遊園地のような面白そうな空間
『ラブホテル・コレクション』ラブホテルは外観ばかりか、内装もド派手である。子どもの頃、大人のテレビやエロ本をのぞき見て知った「遊園地のようなデザインの部屋の中で円形のベッドがクルクル回る、かなり変で、でも面白そうな空間」に、いつか行ってみたいと思っていた。だが、大人になって、あこがれの部屋に入ってみると、子どもの頃に思い描いていた面白い客室はなくなっていた――。アスペクトからの『ラブホテル・コレクション』(著・村上賢司、1700円)は、そんな体験を持つ著者が足掛け5年、全国を調査して見つけ出した魅惑的なインテリアを誇るラブホテルのビジュアルガイドである。
著者は映画監督・テレビディレクター。自主製作映画『夏に生れる』で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞している。
不倫カップルは大事なお客様
『ラブホテル経営戦略』ラブホテルを経営サイドから見たのが、週刊住宅新聞社の『ラブホテル経営戦略』(著・山内和美、1785円)である。著者によれば、「儲かりそうで簡単には儲からないが、それでもやっぱり儲かる」のがラブホテルだそうだ。これから経営を始めたいという人はもちろん、すでに経営している人にも「目から鱗」の発見があるという。
ラブホテルの利用者はやはり不倫のカップルが多い。彼らは夜には帰らなくてはいけないから長居はできない。ビジネスホテルやシティホテルが1日1回転なのに対し、ラブホテルは昼間の休憩で2回転、夜の宿泊で1回転と1日3回転が平均という。不況にも強い点など経営の基本や実務、運営のノウハウから投資のポイントについてまで、ラブホテルビジネスの全体にわたる指南書となっている。