霞ヶ関官僚が読む本
米国ロッキー山脈の麓の町の成功談 創業コミュニティはこうして作る

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ボウルダーの成功体験に触発され、各地で取り組み

   幾つかのアドバイスやコメントが面白い。例えば、大学やベンチャーキャピタルを誘致することで「シリコンバレー」を形から真似すると必ず失敗するということ。起業家や投資家の内発的な相互作用を人工的に作りだすことは不可能だからである。あるいは、ボウルダーにも弱点があって、小都市であるにも関わらず、創業コミュニティがIT、自然食品、バイオ、新エネ、ロハスと5業種に分裂しており、相互交流が弱いのだそうだ。また、女性起業家や女性技術者の比率が低く、彼女たちをインボルブさせる仕組みが脆弱であることなど。縦割り社会や男性社会の弊害は、日本の専売特許ではないようだ。

   本書の欠点は、内容に繰り返しが多く、ややマニュアル的なところだが、それでも長年に亘って米国の片田舎で創業活動にいそしんできた実践者たちが語る言葉は十分に重みがある。ボウルダーの成功体験に触発されて、全米各地、あるいは世界各地で、起業家主導の創業コミュニティづくりが始まっている。閉塞感の高い我が国の地域経済を何とか活性化させたいと考えておられる各地の若手経営者の方にとって、米国ロッキー山脈の麓の町の成功談は一聴の価値があると思う。

経済官庁(審議官級)パディントン

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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