【書評ウォッチ】参院選後の原発課題の行方 政策転換はドイツに学んだら

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   原発か脱原発かの課題に、今回の参院選は答えを出したと言えるのだろうか。福島第一原発の事故から原発との決別を選んだ国の事例を紹介した『ドイツに学ぶ 地域からのエネルギー転換』(寺西俊一ら編著、家の光協会)を毎日新聞がとりあげた。自治体や住民らでつくる「エネルギー協同組合」という言葉が新鮮だ。【2013年7月21日(日)の各紙からII】

「地域のための最良の選択」とは

『ドイツに学ぶ 地域からのエネルギー転換』(寺西俊一ら編著、家の光協会)
『ドイツに学ぶ 地域からのエネルギー転換』(寺西俊一ら編著、家の光協会)

   日本でも電力の買い取り制度が導入されたが、太陽光や風力などの自然エネルギーによる発電事業の多くは大企業主導。生み出された電力や利益は、地域外に流出してしまうことが多いし、広がりにも限りが。これに対して「村のお金は村に」がドイツの理念という。

   本は三つの事例を紹介。自治体や協同組合、住民が出資して設立した組合が、資金面でも協同組合系金融機関の支援を受けて、太陽光や木質チップなどバイオマスで電力や熱を自給し、余れば外部に売るシステムを「地域のための最良の選択」としている。

   出版元はJA系の関連法人だが、本の中身はまじめに「地域からのエネルギー政策」への転換を訴える。「原発事故の教訓を生かさず、再稼働や輸出に突き進む我が国の異様さは、ドイツの人々の目にどう映るのか。学ぶべきことはあまりに多い」と、毎日読書面で「弥」一字の評者が問いかけている。

アンチ教養主義のカッパブックス

   ほかには、『現在知Vol.1 郊外 その危機と再生』(三浦展、藤村龍至編、NHKブックス別巻)を読売新聞が小さく紹介。「郊外に一戸建て住宅を持つ」をゴールとした団塊世代のライフスタイルが終わった今、老朽団地やニュータウンといった制度疲労が集中する「郊外」の問題を、新雅史さんや上野千鶴子らが座談と論考でさまざまに分析した。「日本の再生は郊外から考えなければ」という思いを込めた一冊だ。

   『深海魚ってどんな魚』(尼岡邦夫、ブックマン社)が朝日新聞に。「子ども向け学習図鑑と思ってはいけない」と、評者の荒俣宏さん。NHKの番組などで関心が高まる深海がどんな姿を見せてくれるか。これも確実に地球の一部だ。

   『カッパブックスの時代』(新海均著、河出書房新社)を扱ったのは日経。1954年に光文社が創刊し、『頭の体操』『姓名判断』などのミリオンセラーを生んだ新書群。岩波新書の向こうを張った「アンチ教養主義」が輝いた。著者は2005年終刊当時の編集部員。カッパの気概が今の出版界に脈々と生き続けることを信じたい。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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