いつの時代にもある都市生活者の孤独を歌いたい
日本には、naminoteのようなイメージを与える男女二人組みのユニットは、意外に少ない。今年の上半期、有線で話題になったsalley、ラブ・サイケデリコや、元もとのスーパーフライ、今のドリカム……。二人組みユニットがないわけではないが、naminoteの作品は、言ってみれば「なんだか、色っぽい」のだ。
「イパネマの娘」の頃のアストラッドとジョアンが夫婦だったように、作品を作り上げていく時の縦糸(男)と横糸(女)の関係は、単純だが複雑な絵模様を描き出す力になる。
小林「僕ら二人の関係性を誤解してくれるくらいが良いですね。それは作品制作のコンビネーションが良いからだと思いますし。逆にそれくらいじゃないとユニットとして成立しません」
アルバムの中に2曲、オリジナル曲がある。2曲目の「常夏の池間― Ikema―」と最後の「夕暮れの横顔」。この完成度がすばらしい。ことに「常夏の池間―Ikema―」は宮古島と橋で繋がれた小さな池間島をモチーフにした、まさに夏の歌であり、曲として最高に楽しめる申し分のない1曲。
デビューのカヴァー・アルバムで、すでに次の可能性を体現して見せている。
小林「いつの時代にもある都市生活者の孤独を歌いたい、それが永遠のテーマですね。哀愁、孤独、出会いと別れ……」
naminoteのサウンドからは、大きな可能性とセンスを感じ取ることができる。このアルバム、すでに、今年の夏中、僕の耳元で鳴り続ける事が決まっている。
加藤普
【Blue Vacation 収録曲( )内はオリジナルアーティスト】
1. カナリア諸島にて(大滝詠一)
2. 常夏の池間― Ikema―
3. 横顔(大貫妙子)
4. 素直になりたい(ハイファイセット/杉真理楽曲)
5. 夏のクラクション(稲垣潤一)
6. Don't Know Why(ノラ・ジョーンズ)
7. MIDNIGHT LOVE CALL(石川セリ/南佳孝)
8. 曇り空(荒井由実)
9. Batucada(Brazilianポップススタンダード)
10. てぃーんずぶるーす(原田真二)
11. 夕暮れの横顔