「ピアノでもボサノバ、できるんだ」 今井亮太郎の演奏で「ブラジル人のノリ」に目覚める

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『ピアノ・ジョビン』
『ピアノ・ジョビン』

今井亮太郎
『ピアノ・ジョビン』
OMCA-1168
2000円
2013.7.3発売
オーマガトキ/コロムビア・マーケティング


   日本人のブラジル音楽というと、誰もが思い浮かべるのはおそらく小野リサだろう。「日本人でもボサノバ、できるんだ」みたいな感覚を与えてくれた。

   この今井亮太郎のニュー・アルバムは、その感覚とはまた違って、「ピアノでもボサノバ、できるんだ」と、ブラジル音楽にもう一歩突っ込んだ印象を与えてくれる。

ジョビンをリスペクト

「歌っているように弾いています」と話す今井亮太郎
「歌っているように弾いています」と話す今井亮太郎

   小野リサらのこれまでのブラジリアン・ミュージックのアーティストは、概ねギターを伴侶にしていることが多く、いくら思い返しても、このアルバムのようにピアノだけでブラジリアン・ミュージックを演奏しているアルバムは聴いたことがない。

「ブラジルでは、日本とは違ってピアノはハイソサエティのもので、一般的ではありません。だから演奏には手軽なギターが使われていて、ボサノバ=ギターという印象にもつながっているのだと思います」

   今井は、ブラジル音楽の伝道師のような風格で、そう説明してくれた。まさに!

   ブラジル音楽が世界に知れ渡ったのは、ボサノバ。そのボサノバの生みの親とも言うべき存在が、今回、今井がアプローチしたアントニオ・カルロス・ジョビン。だが、ジョビンはピアニスト。

   おそらく、と前置きして今井は、

「ジョビンは裕福な家庭に育っていると思います。ブラジルでは、ピアノを習うことは音楽的英才教育を受けること。だからブラジルでピアノをやっている人は、皆プロデューサーっぽくなっていく傾向があります。典型はセルジオ・メンデスであり、ジョビンです」

   ジョビンをリスペクトする今井は、意外に知られていない事実をサラッという。

「ボサノバの流れはジョビンが作ったけれど、ブラジルではボサノバは3年ほどしか流行らなかった。結局、ジョビンの名曲はその時期に集中しています」

   だが日本でボサノバは、確実に音楽としての位置を占めている。だから「ボサノバをピアノで弾きたい」という要望も多い。ところが、ピアノの音源がない。

   それならと、今井が立ち上がったと言えば大袈裟か。

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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