「心からの応援歌が欲しいのだ」
本書を通じて、繰り返し語られるマラソンの最大の効用は、「俺、まだやれる」と自信がつくことだ。特に、厳しい状況にあるときほど、マラソンから教えられることは多いし、大きい。
「このまま、どうなってしまうのだろう――正直、不安で不安でたまらなかった。暗く考えれば、どうしようもなく暗くなる。そのうち電話の音が鳴ると、心臓がキュウと締めつけられるように痛むようになった。しかし、私はそれを振り払うように毎朝、走っていた。走らないと、たまらなかったのだ」。
共に破綻処理に携わってきた社外役員の同僚が自殺した。「誰でも、生活基盤を大きく揺るがすような事態に直面すると、どこかに消えてしまいたいという気持ちになる。死んだら楽になれる――そう思う時があるのだ」、「気がつくと、我が身は電車の車輪にずたずたに切り裂かれているのだ。遺書もない。人は覚悟して自殺するのではなく、ほんの軽い思いつきで、今の苦しみ、悩みを解消したくて死を選ぶのではないか」、「うつ病になってもおかしくない状況でマラソンに救われた。同じリズムを刻んで走ると、脳が適度に刺激され、心が落ち着いてくる」。
「若者も私たち初老の人間も、誰もが彼もが閉塞感と絶望の前にたたずんでいる。心からの応援歌が欲しいのだ。そんな時、マラソンを走ってみると、42.195キロという、なんだかとても中途半端な距離なのだが、それが人生のように思えてくる」、「諦めるな、ゴールは近い、みんなガンバッテルじゃないか――自分への応援歌が聞こえてくる。スタートがあり、必ずゴールがある。この道をずっと進めば、必ずゴールがあるのだ」。