【書評ウォッチ】無声映画の弁士や農民運動のリーダー ブラジルの「名もなき偉大な日本人」

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   個性あふれる人たちをブラジルでとことん寄り添いながら撮り続けた映像作家のノンフィクション『忘れられない日本人移民』(岡村淳著、港の人)が読売新聞に。開拓の苦労話ではない。登場する6人はひっそりと、しかし確固としてそれぞれの人生を歩んできた。「名もなき人々の大きな姿」と評者の作家・角田光代さんが言うのもうなずける、魅力的な生き方ばかりなのだ。【2013年7月7日(日)の各紙からII】

著者自身もおもしろそう

   著者はテレビ制作会社に5年間勤めてからブラジルに移住した映像記録作家。以来、ブラジルの日本人移民、社会・環境問題などに独自の視点でドキュメンタリー作品を撮り続ける。一つの作品を完成させるために登場する人物と何年も根気よくつき合いつづける手法だ。どこにも属さず、ひとりで撮影、編集をすべて行うという。

   その著者が今回、ビデオではなく本で紹介するのは、土地なし農民運動のリーダー、無声映画の弁士、70歳をすぎてからブラジルの土で陶芸を始めた女性など。広島で被爆し、認定さえ受けられずにいた在外被爆者の援護に奔走した男性もいる。

   それぞれの立場で弱者のために闘うことをためらわない人たちに出会いながら、取材途中でこみ上げた怒りを著者は隠さない。日本ではほとんど知られることのない人たちの生きざまをとらえた記録は感動的だ。

   個性的といえば、著者自身がユニークな魅力の持ち主らしい。早稲田では考古学を専攻したが、テレビ番組ディレクターとして「すばらしい世界旅行」「知られざる世界」などでおもに中南米を担当し、とうとう自分も住むことに。「ひとりでもご覧になりたい方がいれば」という持論で、ブラジルや日本、米国などで上映会を開いてきたそうだ。こういう人もいるのかと思わせる要素がつまった本自体もユニークだ。

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