「吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」とのサブタイトルを持つドキュメント本『死の淵を見た男』(門田隆将、PHP研究所)が出版されたのは、2012年11月だった。それから半年と少しが過ぎた13年7月9日、福島第1原発の事故当時の所長として現場で収束作業を指揮した吉田昌郎さんが、食道がんのため58歳で死去した。今回、J-CASTモノウォッチの書籍関連記事で過去に取り挙げた本を中心に、吉田さんや福島原発事故関連の本をあらためて数冊紹介する。
米軍や米国務省はどう動いたのか
門田氏著の前掲書は、吉田さんを始め、当時首相の菅直人氏ら90人以上が赤裸々に語った「驚愕の真実」を記録した作品だ。
「私はあの時、自分と一緒に"死んでくれる"人間の顔を思い浮かべていた」
同書の帯には、吉田さんの写真とともに、こんな言葉が紹介されていた。
吉田さんの「肉声」を伝えた同書は、あらためて貴重な記録となりそうだ。7月10日付の毎日新聞朝刊(東京最終版)などによると、吉田さんは、回想録を出版して印税を被災者への寄付に充てようとしていた。しかし、がん治療のため体調が不安定で執筆が中断しがちだったという。
また、元朝日新聞主筆で、「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)をプロデュースした船橋洋一氏が取材の成果をまとめたのが、『カウントダウン・メルトダウン』(上下、文藝春秋、2013年1月)だ。国内だけでなく、米軍や米国務省の動きなど多彩な逸話が出てくる力作だ。
週刊朝日の連載を軸にまとめた『福島原発の真実 最高幹部の独白』(今西憲之・週刊朝日取材班、朝日新聞出版、2012年3月)にあらためて注目する反応も、ネット上には出ている。謎めいた「最高幹部」の正体は、現在のところ明らかにされていない。
「徒然草を最後まで読め」
吉田さんから「徒然草を最後まで読め」と勧められたという「東電の男性社員」の話が、朝日新聞の7月10日付朝刊(同)の社会面で紹介されている。
モノウォッチ連載「霞ヶ関官僚が読む本」では、6月13日配信記事「『徒然草』再読でその面白さ・鋭さにうなる~」で、『徒然草』に触れている。
7月7日には、地元の福島民報社編集局著の『福島と原発 誘致から大震災への五十年』(早稲田大学出版部)も刊行された。