【書評ウォッチ】超ベテラン出版人の図書館論 予算削減の危機から救うには

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   本好きの聖地・街の身近な図書館を、超ベテランの出版人が一市民として体験してみた『図書館に通う』(宮田昇著、みすず書房)が東京新聞と朝日新聞に。本と人との有力な出会いの場を再発見し、刺激もされ、疑問も呈したエッセイ集だ。

   これぐらい幅広い層に日ごろから使われる公共施設も珍しい。なんといっても、良書を無料で借りられるのは助かる。でも、書店や出版社からは「ただで貸し出されてはたまらない」と批判が出ていた。予算削減や開館日時の問題もある。そこで書物世界を熟知する84歳が何を感じたか、興味は尽きない。【2013年6月30日(日)の各紙からII】

「図書館で面白かった本は、買う」

『図書館に通う』(宮田昇著、みすず書房)
『図書館に通う』(宮田昇著、みすず書房)

   著者は翻訳出版エージェントとして戦後から今日まで業界を支えてきた。一線を退いて7、8年前から街の図書館に通い始め、触発されて書きつづった。エッセイ17編の中には藤沢周平や米仏の出版社の話などとともに、市民に根づいた図書館をまのあたりにした新鮮な驚きが独特の角度から盛り込まれている。

   数百人待ちの一冊を受けとるまでの長ーい体験談があれば、おもしろい本を見つけたときの喜びも。一方で、「公立無料貸本屋」と出版界から迷惑顔をされてきたことにも触れる。

   やがて、いま予算削減にさらされる図書館を救うのは、貸し出しの増加と市民参加型の資料収集だとの持論に。「本人の言葉を借りれば、街の図書館通いの随筆」と、東京新聞の評者・文芸評論家の小田光雄さん。朝日新聞では著者紹介コーナーに、とつとつと語る著者の姿が載った。活字離れを防ぐ努力に触れて「図書館で読んで面白かった本は、買うものです」という一言が出版界との接点を指して印象的だ。

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