イスラーム民族の歴史の興亡
『中東イスラーム民族史 競合するアラブ、イラン、トルコ』
世界小学校の教室には、イラン君のほかにイラク君やトルコ君もいる。昔から中東グループのメンバーでライバルとして張り合ってきた。イラク君はイラク戦争後の新しい秩序を模索中だ。トルコ君はEU加盟をめざし、2020年のオリンピック開催へ名乗りをあげている。イラン君のところは大統領選挙で穏健派が勝ち、これまでの突っ張り姿勢に変化が見られるかもしれない。
中央公論新社の中公新書『中東イスラーム民族史 競合するアラブ、イラン、トルコ』(著・宮田律、924円)は、イスラムを共通基盤として競合と協調を繰り返してきた3民族の歴史をたどり、欧米、ロシア、イスラエルを巻き込んだ地域の興亡を描く。2006年の初版だが、骨太な構図が描かれ現代のイスラム世界を理解するうえで貴重な1冊だ