難題山積の中、答えを探す
重い物語だ。「居場所がなく、窃盗を繰り返し刑務所での生活を求め実刑を願う老女」、「高級有料老人ホームに父親を入れ介護負担を免れた息子と、認知症の母を働きながら介護する母子家庭との大きな格差」、「介護してきた親を殺されたことで、むしろ『救われた』と感じる家族」など、今、この社会で現実に発生している様々な問題、病理が矢継ぎ早に姿を現す。「人が死なないなんて、こんなに絶望的なことはない!」。介護地獄に追い詰められた娘の一言が突き刺さる。
本書を読みながら、繰り返し問われたのは、「こうした厳しい現実に、どう答えを出していくのか」。しかも、「これから諸条件はもっと悪くなっていく見通しなのに」。
戦後の社会保障は、常に、イギリス、ドイツ、北欧など参考とする先達がいた。その中から日本にフィットする政策を選び、実施すればよかった。しかし、4人に1人が高齢者となった今の日本に参考例はない。介護問題一つとっても、急増する認知症にどう対処するか、労働人口が減り続ける中で介護従事者をどう確保していくか、間もなく年間170万人にも及ぶ死亡者の看取りをどうするかなど、これまでの政策の延長では答えが出ない難題が山積している。
最大限、頭を柔軟にして、オリジナルなアイディアを絞り出していかなければならない。そして何より、そのアイディアを人々の理解と納得を得て実行していけるかどうかが問われている。
「もしかしたら、今はまだ全然ましで、十年後、二十年後にはもっと酷いことになっているのかもしれない。いやきっとそうなんだ。ひどく分の悪い、絶望的な戦いですよ」。死刑判決を受けた「哀しき殺人鬼」が語った、この悲観的な未来予想図を乗り越えるビジョンとそれを実現する道筋を描くことの切実さを感じる。
厚生労働省(課長級)JOJO