アベノミクスで経済成長すれば、増税しなくても財政再建できる……なんていう甘い幻想とはそろそろ訣別し、「耳に痛くても」事実に目を向けようと呼びかけるビジネス書が出版された。
法政大の小黒一正准教授(公共経済学)は、新著『アベノミクスでも消費税は25%を超える』(PHPビジネス新書)の中で財政再建に向けた(消費税)増税はもう待ったなしの状況だと論じ、「増税先送り」などの楽観論が根強くある現状に警鐘を鳴らしている。
消費税は25%に?
国の財政状況は、税収が歳出の半分を下回り、借金(公債発行)でしのいでおり、今後も社会保障の国庫負担は年間1兆円規模で増加していくと予測されている。地方も合わせた公的債務残高は、名目GDPの200%以上にも達する「きわめて特異な状況」だ。
一方で、「増税は景気がよくなるまで待つべき」といった増税先送り論や、そもそも「日本は、どんなに国債残高がふえても財政危機が生じることはない」という楽観論もよく耳にする。
こうした先送り論や楽観論に対し、小黒氏は「負担や痛みを避けたいという人びとの素朴な願望につけこ」んだ、根拠が薄弱で「受け」狙いの論調だと厳しく批判。「『経済成長すれば財政再建できる』はほんとうか」など10の論点に沿って、日本の財政や社会保障、景気などについて数字を示しながら包括的に議論を展開し、「楽観論」を斬っている。
日本の現状は、「消費税10%」の是非どころか、近い将来の「消費税25%」の可能性も考える必要があり、「これ以上、増税を先送りすべきではない」と結論付けている。
また、「(現役・引退世代による将来世代への)財政的幼児虐待」という言葉も紹介し、償還の税負担を将来世代へ先送りしている現状も分析している。
小黒准教授は、大蔵省(現・財務省)入省後、同省の研究所主任研究官、一橋大准教授などを経て現職。『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)などの著書がある。
2013年6月19日、発売された。945円。