東京の懐かしい香りと貴重な雰囲気
ほかには、『東京放浪記』(別役実著、平凡社)を東京新聞が紹介している。小市民社会の悲喜劇を軸に独特の演劇を想像してきた著者が、東京の街と昭和という時代をとらえたエッセイ集。
長野から出てきて目黒、芝、六本木、広尾、永福町と移り住むたびに受けた刺激。著者の仕事場は自宅よりむしろ街それぞれにある喫茶店だったそうだ。「静かな文章で、都会を放浪する演劇人としての人生模様を描いているが、文章の合間から東京の懐かしい香りが届いてくる」とは評者・佐藤洋二郎さんの読後感。そういう場所が少なくなっている今だからこそ、貴重な雰囲気の記録なのだろう。
(ジャーナリスト 高橋俊一)
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