文化・情報資源政策の中核に大化けするか
柳氏は、公務を民間に開放する指定管理者制度への肯定的な評価、書店との連携により図書館で人気本を売るという発想や「図書館の自由に関する宣言」の特別扱いへの疑問など、これまでの業界常識にとらわれない豊かな構想を、本書で示していた。
意見が異なるが、広い意味での「身内」であり、図書館界の頂点にある国立国会図書館の論客がやることには表だって厳しく批判できないが、その外にいる武雄市の「しろうと」首長と「TSUTAYA」(運営=カルチュア・コンビニエンス・クラブ)であれば遠慮はいらないということなのだろうか。2011年、同じ流れの千代田区の日比谷図書文化館が開館した際は、図書館界から大きな批判は起きなかった。
10年前の本だが、『未来をつくる図書館~ニューヨークからの報告』(菅谷明子著 岩波新書 2003年)も、日本の残念な現状に鑑みて、コミュニティに根ざし、社会に向けて開かれた公共図書館のありようを生き生きと示す、いまだに一読に値する著作だ。
篤実な図書館情報学者として著名な根本彰東大教授の『理想の図書館とは何か~知の公共性をめぐって』(2011年 ミネルヴァ書房)や柳氏が有意義な解説を書いている『知の広場~図書館と自由』(アントネッラ・アンニョリ著 2011年 みすず書房)を読めば、硬直化した図書館界の変革を期待したい気持ちになる。「『公共』図書館」の名に値する、地域活性化などに必要な文化・情報資源政策の中核に大化けする可能性にかけてみたい。
経済官庁B(課長級 出向中)AK
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