社会を良くしたいけれど、どうしたらいいの? 素朴な思いに応える本『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』(ソーシャルデザイン会議実行委員会編著、宣伝会議)が読売新聞に。自分の「気づき」や「疑問」を社会貢献に結びつけ、そのためのアイデアや仕組みを考えようという一種の呼びかけ・キャンペーンだ。
デモや集会とはだいぶ違った社会改革・貢献の仕方は、いかにもスマートで格好いい。一方で、これで本当に世の中が良くなるだろうかという基本的な疑問もつきまとう。井上雄彦さんが描いた表紙のような、ひたむきさと情熱を秘めた若者に大人社会がどう対応するべきかが実は問われていると考えて読めば、いっそうおもしろい。【2013年5月19日(日)の各紙からII】
楽しく軽快なイメージで
ソーシャルデザインとは「社会の課題を、自分らしくクリエイティブに解決していく」ことだという編著者の定義を、評者の社会学者・開沼博さんも引いている。これだけではわかるような、わからないような。要はマーケティング、プロモーション、メディア活用などビジネス的な手法を通じて「社会問題の解決」に誰でも参加できる仕組みを作ろうとする意図がある。担い手は企業でも自治体でも学生でもいいと幅広い。
委員会を名乗る編著者が大手広告代理店の電通と出版やコピーライター育成などを手がける株式会社の連携チームらしいと知れば、めざす方向も納得できる。「一部のすごい人が社会をよりよくするわけではない、アイデアと行動力さえあれば社会をよくするソーシャルクリエイターに誰でもなれる」と強調。本は事例と実践家へのインタビューを盛った入門書。楽しく、軽快な社会貢献。そのへんのイメージだろうか。