安倍首相はなぜ、憲法改正にこだわるのか。護憲派の人たちは戦争への道を開くことになるというが、本当にそうなのか。参院選を前に憲法改正をめぐる様々な論議が起きている。国のあり方を決める憲法について、1人ひとりが意見を持つことが重要になってきた。憲法を知り、改正の是非を考える上で参考にしたい3冊を紹介する。
J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」(https://books.j-cast.com/)でも特集記事を公開中。
「芦部憲法」知ってますか?
『憲法 第五版』
日本を代表する憲法学者によって書かれた憲法の教科書の定番である。岩波書店の『憲法 第五版』(著・芦部信喜、補訂・高橋和之、3255円)は、1993年の刊行以来「芦部憲法」と親しまれ、学生や研究者から実務家まで多くの人に読み継がれてきた。著者は1999年に死去したが、最高裁が出した違憲判決などを織り込み1昨年(2011年)、4年ぶりに改訂された。
今年(2013年)3月の参院予算員会で民主党議員が安倍晋三首相に、著者の名を上げて知っているかと聞いたことが話題になった。法学部出身で憲法改正に意欲を見せる首相は当然承知していると思われたが、答弁は「私は存じておりません」だった。これには支持者たちからも落胆や失望の声があがった。改正前に是非一度、目を通してほしい1冊だ。
12の改正案・改正意見の詳細比較
『憲法改正試案集』
日本の今の憲法は制定後、一度も改正されたことがない。だが、憲法改正が持論の安倍氏が首相に就任したことや、世界情勢や国民の意識の変化もあり、次の参院選では憲法改正が争点のひとつになろうとしている。各政党や団体は、一体どこを、どう変えようとしているのか。また、国民はどう考えればいいのか。集英社新書の『憲法改正試案集』(著・井芹浩文、777円)は、こうした疑問にわかりやすく答えてくれる。
天皇制、戦争放棄、二院制、首相公選、今話題になっている改正要件の緩和などのテーマごとに、自民党新憲法草案をはじめ主な12の改正案・改正意見の詳細比較と徹底解説で論点を浮き彫りにする。2008年と5年前の刊行だが、公約やスローガンの背景を知り、一票を投ずる際の参考になる。
耳から聴いて憲法の精神を再認識
『オーディオブック 日本国憲法』
文字を読んで理解するか、音声を聴いて身につけるか。見ながら聴けば、より効果が大きいともいわれる。司法試験対策に音声で法律を勉強する人もいるというが、パンローリングの『オーディオブック 日本国憲法』(ダウンロード販売100円)は耳から聞く憲法である。
前文と11章103条からなる憲法の全文が音声化されている。憲法を読むのが億劫という人には便利だ。また、ちゃんとした日本語の朗読を聴くことで、憲法に込められた精神を再認識することもある。今後、憲法論議が熱くなるなか、しっかりした考えを持つために耳で確かめるのも一法だ。