フランソワ・オルランド政権発足から1年。選挙公約であった、「同性愛者間の婚姻および養子を持つことを認める」法案が4月(2013年)、フランス下院で賛成331、反対225で可決された。これで、フランスは世界で14か国目、ヨーロッパでは9か国目の同性婚が可能な国となる。
「2組に1組が離婚」のフランスで同性愛者が「結婚」にこだわる理由
5月5日に行われた反対派デモ
この法案を巡っては、2012年夏から、賛成派と反対派の双方が数回にわたってデモを行い、13年1月13日にパリで行われた反対派の大規模デモには、80万人が参加したと主催組織が発表(警察発表は34万人)した。4月に入ると、反対派のデモ参加者が機動隊と衝突したり、国会議事堂前に野陣を張った67人が立ち退きを拒否して逮捕されたり、と示威行動が過激化する気配があった。さらに、フランス北部リールのゲイバーが襲撃されたり、ホモセクシュアルであることを公言している、アルザス地方の某村長のもとに弾丸入りの脅迫状が届いたりするなど、物騒な事件も起きている。法案が上院を通過した今でも、反対派のデモは全国各地で続いているのだ。この5月5日にも保守派デモの集合地点として知られる、パリのアンバリッド前、ヴォーバン広場に、反対派が数万人結集した。
さて、フランスには、PACS(連帯市民協約)と呼ばれる、事実婚カップルに結婚とほぼ同等の法的権利を授ける制度がある。1999年に同性愛カップルの権利を守るために制定されたが、フタを開けてみると、利用者の9割以上が男女カップル。離婚率5割の同国で、「離婚手続きが面倒」、「結婚という慣習に囚われたくない」、と考えるためらしい。同性愛者の中にもこの法案を疑問視する人もいて、「僕たちの愛は、僕と彼、友人、家族が認めるもので、結婚という制度によって承認される必要性は感じない」と新聞のインタビューに答えていたホモセクシュアルの男性もいたし。