『死ぬための教養』(嵐山光三郎著 新潮新書)。本書は、著者が大病や交通事故で入院して、死について考えるために読んだ書物を紹介し、解説した本である。
46冊を紹介
「死ぬための教養」について、著者は以下のように主張する。(1)「天才の医者も学者も凡人もスポーツ選手もみんな死んでゆく。……いかなる高僧も哲学者でも、自己の死をうけいれるのには力がいる」。(2)人類は死の「普遍的恐怖と闘い、さまざまな処方箋を考えて」きた。「その最大なるものは宗教」であるが、今や宗教はその力を失っている。(3)自分の死を受容するという意味で、「自分を救済しうるのは、使い古した神様や仏様ではなく、自分自身の教養のみである」。(4)「教養」とは「『死の意味』を知る作業に他ならず」、具体的には書物を通じて死の意味を知る作業をするわけであるが、その書物は「精神が健康状態である時に、虚無に陥ることなく、冷静かつ科学的、実証的に書かれたものである必要」があり、また「教養」を身につけようとする側も「まさか死なないだろうと考えているときにこそ」身につける必要がある。
著者が紹介する「死ぬための教養」のための本は、著者が45歳で初めて吐血して病床で読んだ松田宏也『ミニヤコンカ奇跡の生還』にはじまり、クリスチャン・シャバニス『死をめぐる対話』、養老孟司『唯脳論』、松井孝典『地球・宇宙・そして人間』、岸根卓郎『宇宙の意思』、ビートたけし『たけしの死ぬための生き方』、ヴィクトール・E・フランクル『死と愛』、澁澤龍彦『唐草物語』、山折哲雄『生と死のコスモグラフィー』、司馬遼太郎『空海の風景』、柳原和子『がん患者学 長期生存をとげた患者に学ぶ』、宋左近『私の死生観』等々46冊に上る。