【書評ウォッチ】震災後に取材開始のライターとは違う 20年以上の実態踏まえた告発本

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漁業経済学者が「ぎりぎりの一線上」で

   『漁業と震災』も、震災後の問題を論じるばかりではない。自然に溶け込んで続いてきた漁業の危機がまずあり、そこに大震災が起きたという位置づけだ。

   東京海洋大准教授の著者が風評被害やメディアによる災害に触れ、復興策の一つとして持ち出された企業参画の「水産復興特区」論を惨事便乗型の「第二の人災」と批判する。たしかに、経済的側面だけでは海の暮らしや仕事は片づけられない。「漁業経済学者の側から、ぎりぎりの一線上で訴えている」と、評者・海洋民俗学の川島秀一さんが薦めている。

   ほかには、『医療にたかるな』(村上智彦著、新潮新書)が読売新聞に。「薬剤師の分際で何を言うか! 医師になってからものを言え」と一喝され、憤慨して医師になったという著者を評者の経済学者・中島隆信さんが紹介している。

   その後、夕張市の医療現場で5年間奮闘した医師の記録と見解。地域医療の最前線から「弱者のふりをする高齢者」「医療ミスをねつ造するマスコミ」を激しく批判する。「過激かつ愛に満ちた処方箋」と出版社サイトにあるように、ズバリともの申す本だ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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