【書評ウォッチ】3Dプリンターが変える「ものづくり」 個人でデザイン、家庭で製造

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   ITの分野でまた一つ革命が進行中だ。紙に文字やデザインを印刷するように立体を作る3Dプリンター。ものづくりが企業ではなく個人でできる、誰もが家庭で製品設計や生産を楽しめるようになると説いた『MAKERS』(クリス・アンダーソン著、NHK出版)を、日経新聞が読書面トップで。「これは21世紀の新産業革命」と書店や出版サイドの掛け声も華々しい。家庭が工場に、みんながデザイナーになるかもしれない。【2013年5月5日(日)の各紙からII】

年賀状のようにデスクトップで

『MAKERS』(クリス・アンダーソン著、NHK出版)
『MAKERS』(クリス・アンダーソン著、NHK出版)

   3Dプリンターは、物の形をデータ化する。それをもとに樹脂などを噴きつければ、立体的な造形物を、従来の鋳型や金型より素早く作ることができる。

   すでにこの技術を取り入れた工場も国内にあり、これまでなら2から3週間かかった鋳型の加工が3、4日ででき、複雑な形も扱えることを同じ5日の読売新聞が経済面で書いている。個人向けに10万円台の製品も登場し、周辺装置の開発が進めば個人のアイデアが起業につながりやすくなりそうだ。

   日経の評者・専修大の西岡幸一さんは「ものづくりの発想を大きく変える可能性がある」と強調する。つくりたい形を「あたかも年賀状やカラフルなリポートをデスクトップで印刷できるように」なるという産業未来論。著者のアンダーソンは米「ワイアード」誌編集長で、2007年にタイム誌の「世界でももっとも影響力のある100人」に選ばれた。

個人レベルの反応と活用競争もスタート

   米国では、オバマ大統領が2月の一般教書演説で研究開発の強化を表明した。「ほとんどすべてのものの作り方を革命的に変える」と、アメリカ製造業の復活をめざす。世界ではストラタシス社や米3Dシステムズ社といった大手のほか、新興メーカーも台頭する気配だ。

   精巧な鋳型や金型は日本メーカーの得意分野。いちだんと上質な製品開発が求められるとともに3D技術そのものへの対応も必要になる。家庭でも扱える以上、企業だけでなく個人レベルでも活用競争がすでに始まったと考えるべきだろう。

   関連本として評者があげるのは『Fab』(ニール・ガーシェンフェルド著、オライリー・ジャパン)、『インクジェット時代がきた!』(山口修一、山路達也著、光文社新書)。ほかにも、雑誌『東洋経済』1月12日号が「メイカーズ革命」を特集している。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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