真っ白な350ミリリットル(ml)缶に、黒字でシンプルな文字が並ぶ。余計な柄は一切なく書かれている言葉は「キリンじゃなくちゃつくれないものを、もう一度つくろう。」だけ。キリンビールの新ジャンル飲料「キリン 澄みきり」のサイトにアクセスすると、この斬新なデザインの缶が目に飛び込んできた。
多くのアルコール飲料の缶は、派手な色づかいでギラギラとした押しの強いデザインだが、このサイトに掲載されているのはシンプルでストレートな思いが書かれた缶だ。発売前のサンプリングのために用意された「挑戦缶」というものらしい。新発売のこの製品にどのような狙いがあるのか。都内のキリンビール本社を訪れ、担当者に話を聞いた。
社長も自らメッセージを書いた
部屋に通されるとキリンビール社員が6人集まり、熱心にペンでメッセージを書いていた。話を聞くと「キリン 澄みきり」キャンペーン用に、手書きのメッセージを1万枚も作るという。キャンペーンでは、「キリン 澄みきり」サイトから応募した人の中から抽選で1万人に、真っ白なデザインの「挑戦缶」(350ml)2本と、社員による手書きのメッセージが届く。
社員らは「自信を持って、おすすめします」「後味に雑味なし。是非お試しください」などと、1枚1枚ていねいに書き上げていた。大きく勢いのある字を書く人もいれば、丸い字をゆっくりと書く人もいて、それぞれ個性がにじみ出る。本社だけで約500人が手書きのメッセージを書き、工場を含めると約3000人にものぼるという。
この地道とも言えるキャンペーンについて、同製品のマーケティング担当者・北島苑さんは、「営業以外の内勤の人や工場の人が、どうやって製品に込めた思いを伝えられるかを考えました。我々はこれをブランド伝道師活動と言っている」と笑顔を見せた。
さらにキリンビール社長が自ら筆を執り、メッセージを書いたことを明かし、「社長も『書くよ~!と気合が入っていました。メッセージのところに社長の名前が入っています」と話した。「これほど多くの人数が関わってPRするのは今回が初めて」だそうで、まさに全社一丸となって推進しているプロジェクトだ。ペンを走らせる手と表情から新商品に対する自信が伝わってきた。
宮本武蔵をイメージした「キリン 澄みきり」
「キリン 澄みきり」は、120年以上の歴史がある「キリンラガービール」のホップの知見や、「キリン一番搾り生ビール」の麦へのこだわり、「麒麟淡麗(生)」の大麦のおいしさを引き出す技術を活用している。雑味を抑えながら麦本来の味を引き出す新酵母を採用することで、「歴史と今ある新しい技術を融合した味が実現し、麦100%(※麦芽・大麦・大麦スピリッツを使用)だけど嫌な雑味のない澄みきった後味の新ジャンルが完成しました」という。
30代の男性がコアなターゲットで、毎日飽きずに飲めるような製品として「今後10年、20年のスタンダードを狙う」。ブランドイメージはみんなと一緒にワイワイ飲むというような「のどごし(生)」とは異なり、宮本武蔵をイメージするような「迷いなく潔い人」を意識したそうだ。
「『澄みきり』の味に自信があるので、できるだけ事前に飲んでもらいたいです。新ジャンルのユーザーだけでなく、ビールユーザーに飲んでもらいたい。今回のキャンペーンもこの本気感が伝わればと思って実施しています」(北島さん)
キャンペーンの応募期間は2013年4月29日までだった。